短編小説– category –
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クリームソーダとホットココアによる午後の饗宴(短編小説 / 青春)
アイスを失ってしまったクリームソーダに、存在する意味はあるのだろうか。藍沢は、もはや緑色すぎる液体としか呼称できなくなってしまったそれをストローの先で軽く掻き回す。数種類のプレートランチが主に女性層に人気を博しているこのカフェ・ダイニングにおいて、そんな少年の姿は少なからず人の目を引いた。 -
今日、魂を拾った。(短編小説 / ミステリー)
今日、魂を拾った。一見すると、それはただの青いビー玉にしか見えなかったが、その中心に黒字で大きく「魂」と書かれてあったので、そうか、これは魂なのかと納得してポケットの中にしまった。家に戻り、自室の文机の上に魂を置く。転がってしまわないところを見ると、この机はちゃんと水平なようだ。さすがは年代物。 -
オガシロ(短編小説 / 現代ファンタジー)
ねえ、ご存じかしら? この辺りには尻尾が九本の白い狐が住んでいて、死に往くものの最期の願いを叶えてくださるんですって。それは、どんな願いでも? ええ、どんな願いでも。かわいい女の子たちが、公園だったか空き地だったかで、そんな噂話をしていたような気がする。ごくありふれた都市伝説。そう思っていた。――今、この瞬間までは。
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