おこもり奇譚(長編小説 / 現代ファンタジー)

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人間の友達がいないのは狐守の家系だからだと、筒井数(つつい・かず)は思っている。今日も今日とて、いつの間にか水筒から逃げ出していたキツネ――キューちゃんを探して、学校中を駆け回る日々だ。
1年5組の変人。周りからは、そう揶揄されて嗤われてもいる。
在里颯真(ありさと・そうま)という、別クラスの爽やかイケメンを除いて。
有名な観光地である岡山県倉敷美観地区の古民家カフェ『狐し庵(こしあん)』でアルバイトをしていることにも、狐守という事情が絡む。
ここの従業員は、全員もれなく人の姿になれる不思議なキツネたちだ。特殊な境遇に不満を抱えている数だが、彼らと過ごす滑稽な日常を、なんだかんだ楽しんでいる自分がいることも知っている。

そんなある日、狐の父と人間の母をもつ少女ユキが「おかあさんのにおいがする!」とキューちゃんに飛びついたから、さあ大変!
なぜ百年以上も前に亡くなっているはずのユキの母親に、キューちゃんが関係してくるのか。
混乱する数だったが、母親に会いたいという願いをどうしても口に出せないユキを見て、思わず今までの人生で一度もしたことがない提案をしてしまう。

ユキと母親の接触を全力で阻もうとする父親――天狐のシキの不在期間は、わずか2日。
その間に、数とユキと、ついでにキューちゃんは、ユキの母親を探し出すことができるのか!?
現代ファンタジー カフェ あやかし 異能力 バトル 生まれ変わり
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エブリスタ「特集 東邦幻想奇譚」掲載